英語 / Analysis
第1回 岐阜大学前期英語は11年間でどう変わったか
岐阜大学の前期英語は、11年間ずっと同じ形式だったわけではありません。
2016~2026年度の過去問を並べると、独立した文法・語法問題が多かった時期から、複数の英文中で語句・節・文を補う時期へ移っています。そして2025年度からは、5セクション・各10問という明確な形式が現れました。
この記事では、11年間の変化を3期に分け、各年度の構成と出題内容を詳しく見ていきます。なお、2015年度以前は現行形式との断絶が大きいため、傾向分析の対象外とします。
11年間の構成一覧
| 年度 | 大問・セクション | 配点構成 | 設問数 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 2016 | 大問2 | 52%・48% | ― | 文法変形、語法、会話、誤文指摘、多文化主義の長文 |
| 2017 | 大問3 | 25%・25%・50% | ― | 文法・会話、古代DNA、血液と老化 |
| 2018 | 大問3 | 25%・25%・50% | ― | 語形変化、キャリア、科学者への助言 |
| 2019 | 大問3 | 大問別 | 67問 | 短い空所、会話・図表、文挿入、記憶、感染症 |
| 2020 | 大問2 | 54%・46% | 50問 | 複数文章の空所・挿入と、医療に関する長文 |
| 2021 | 大問2 | 39%・61% | 60問 | 空所・整序、インタビュー対応、薬剤耐性菌 |
| 2022 | 大問2 | 39%・61% | 54問 | 空所・会話、宇宙・睡眠・病気などの読解 |
| 2023 | 大問3 | 31%・38%・31% | 55問 | 3文章の空所、SNSと科学、学校教育 |
| 2024 | 大問3 | 31%・38%・31% | 53問 | 3文章の空所、子どもの遊び、人間の寿命 |
| 2025 | 5 Sections | 前半3 Sectionで50%、後半2 Sectionで50% | 50問 | 1語空所、単語・句・節・文の混合空所、整序+不要語 |
| 2026 | 5 Sections | 前半3 Sectionで50%、後半2 Sectionで50% | 50問 | 2025年度と同じ「空所補充40問+整序10問」 |
2016~2018年度は問題番号の数え方が現在と異なるため、表では総設問数を示していません。一方、2019年度以降は設問番号が試験全体で連続しており、分量の比較がしやすくなっています。
第1期:文法・語法と長文を分けて解く時期
対象は2016~2018年度です。
2016年度
大問は2題で、配点は52%と48%です。
前半では、文法変形、文法・語法選択、会話文、誤文指摘などが出題されました。後半は多文化主義を扱う長文で、語彙、内容理解、T/F/NTが中心です。
この年度では、文法・語法を文単位で処理する力と、まとまった長文を読む力が比較的はっきり分かれています。
2017年度
大問3題で、25%・25%・50%の配点です。
前半には文法・語法、会話、誤文指摘があり、後半では古代DNAと老化研究が扱われています。長文では、語句補充、本文で支持される内容、最適な題名などが問われました。
最後の大問だけで50%を占めるため、当時から「文法だけで高得点を取る」ことは難しい構成です。
2018年度
大問3題で、配点は2017年度と同じ25%・25%・50%です。
MITの入試案内では、空所補充だけでなく語形変化も出題されました。ほかに、複数の仕事を組み合わせるポートフォリオ・キャリア、科学者を目指す若者への助言を扱う長文があります。
内容理解では、定義、主題、文挿入、理由、T/F/Nなど、現在にもつながる形式が見られます。
第1期の特徴
- 独立した文法・語法問題が多い
- 文法変形や語形変化が出る
- 会話文・誤文指摘が一定数ある
- 長文の配点はすでに高い
- T/F/N型の照合問題が多い
現在の形式とは異なりますが、文法・語法の基礎力を点検する教材として利用できます。
第2期:文法・語彙を文章の中で問う時期
対象は2019~2024年度です。
この時期の最大の変化は、単独の文法問題よりも、出典のある文章の中で語句や文を選ばせる問題が増えたことです。
2019年度
大問3題・全67問です。
短い文章の空所補充、会話、図表を含む問題に加え、オバマ元大統領の広島演説を用いた文挿入、記憶研究、感染症・環境を扱う長文が出題されています。
文挿入では、候補文の意味だけでなく、代名詞の指示先や前後の論理が重要です。ここから「一文が文法的に成立するか」より「文章全体の中で機能するか」を重視する傾向が明確になります。
2020年度
大問2題・全50問で、配点は54%・46%です。
Q1~44では、竜巻、通勤、社会学、医療AI、SDGsなど複数の出典が使われ、空所補充や語句挿入、会話が組み合わされています。Q45~50は、医師が患者と過ごす時間を扱う長文です。
一つの長文を深く読むだけでなく、題材の異なる文章へ素早く切り替える力が必要になりました。
2021年度
大問2題・全60問で、配点は39%・61%です。
前半には複数の空所・整序問題と医療エッセイがあります。後半には獣医へのインタビューで質問と回答を対応させる問題、薬剤耐性菌を扱う長文があります。
後半が61%を占めるため、情報対応と長文理解の比重が特に高い年度です。
2022年度
大問2題・全54問で、配点は39%・61%です。
宇宙地図、睡眠、がん、ウイルスの命名、食欲など、科学・健康分野の文章が多く使われています。Q1~31は空所や語句挿入、会話、Q32~54は長文・要約系が中心です。
ただし、公開PDFでは著作権上の理由により複数の本文が削除されています。問題形式は確認できますが、本文を使った完全な演習には制約があります。
2023年度
大問3題・全55問で、配点は31%・38%・31%です。
最初の大問では、日本の文房具、在宅勤務、水耕栽培という3つの文章を用いた空所補充が出題されました。後半は、Twitterと科学情報、学校教育の実験を扱う長文です。
複数の文章を読み替えながら、空所補充と内容理解の両方を処理する構成です。
2024年度
大問3題・全53問で、配点は2023年度と同じ31%・38%・31%です。
チーミング、家畜のメタンを減らすワクチン、マンモスのゲノムを扱う空所問題に続き、子どもの危険を伴う遊びと人間の寿命に関する長文が出題されました。
研究内容の説明が多く、研究対象、方法、比較、結果、限界を整理する力が求められます。
第2期の特徴
- 複数の出典文が一つの試験に使われる
- 語彙・文法が文章の中で問われる
- 文挿入、対応、要約、題名などが増える
- 科学・医療・教育・環境の記事が中心になる
- 本文と選択肢の言い換えを見抜く必要がある
第3期:5セクションに固定された時期
対象は2025・2026年度です。
両年度とも、5セクション・各10問・計50問という同じ構成です。
2025年度
| Section | 題材 | 主な形式 |
|---|---|---|
| 1 | 時間 | 1語の語彙・文法空所 |
| 2 | Stanfordの使命 | 語句・文の空所 |
| 3 | 会話の始め方 | 単語~文・見出しの混合空所 |
| 4 | クジラの音声 | 単語~節・文の混合空所 |
| 5 | セミ | 語句整序+不要語 |
2026年度
| Section | 題材 | 主な形式 |
|---|---|---|
| 1 | 間隔反復 | 1語の語彙・文法空所 |
| 2 | ポッドキャスト | 語句・文の空所 |
| 3 | 睡眠と学業 | 単語~節・文の混合空所 |
| 4 | 深海採掘 | 単語~文・見出しの混合空所 |
| 5 | 双子とアレルギー | 語句整序+不要語 |
題材は異なりますが、出題形式の対応関係は明確です。2025年度だけの一時的な変更ではなく、2026年度にも同じ骨格が継続しました。
特に重要なのは、Section 3・4もすべて空所補充だということです。2025・2026年度の両Section、計40問を設問単位で再分類すると、単語・短い連語が15問、広義の「節補充系」に当たる長い句・節・文が25問でした。節補充系が62.5%を占めます。
現行形式は、次の二つへほぼ集約できます。
- Sections 1~4:空所補充40問
- Section 5:整序英作文10問
変わったものと、変わっていないもの
大きく変わったもの
- 独立した文法・語法問題の割合
- 大問数と設問番号の付け方
- 複数の出典文を利用する量
- 文脈空所、とくに長い句・節・文を補う問題の比重
- 2025年度以降の5セクション化
11年間を通して変わっていないもの
- 長文読解の配点が高い
- 文法だけでなく本文の論理を使って空所を決める問題が多い
- 科学・社会・教育・医療などの説明文が使われる
- 語彙力と文法力の両方が必要
- 題名・要約・内容一致では文章全体の主題を捉える必要がある
この変化から分かる対策方針
現在の試験に向けては、文法問題集だけを繰り返すのでは不十分です。
文法・語彙は、次の形で使えるようにする必要があります。
- 長文中で品詞を判断する
- 前後の論理から接続表現を選ぶ
- 代名詞の指示先を追う
- 句・節・文の両端を前後へ接続する
- 原因・結果・例・対比など、空所の段落内での役割を判断する
- 文構造を使って語句を整序する
過去問演習では、2025・2026年度を現行形式の基準とし、2023・2024年度で文章量への対応力を補うのが効率的です。2019~2022年度は文挿入・対応・要約など形式の幅を広げ、2016~2018年度は文法・語法の弱点確認に使えます。
2015年度以前を分析対象にしない理由
過去問は古いほど価値が高いわけではありません。現行形式の対策では、現在と同じ判断を繰り返せるかが重要です。
2015年度以前を傾向分析から外す理由は三つあります。
-
問題構成の断絶が大きい。
現在の5セクション・50問、空所補充40問+整序10問という骨格へ直接つながりにくい形式です。 -
出題予測への寄与が小さい。
直近の継続形式を予測するには、2025・2026年度の一致と、2016~2024年度の移行を見る方が有効です。 -
演習時間の優先順位が低い。
2015年度以前まで広げるより、現行2年を解き直し、長い句・節・文の接続理由を説明できるようにする方が得点へ結び付きます。
したがって、岐阜大学対策として必要な分析範囲は2016年度以降で十分です。2015年度以前の問題を一般的な英語演習として使うことはできますが、現在の傾向を知るために収集・分析する必要はありません。
次の記事:第2回 現行5セクションを詳しく分析
出典・確認資料
- 岐阜大学前期英語・提供資料に基づく分析提供資料に基づくオリジナル解説。過去問本文・問題画像は転載していません。